真福長者 (真福寺町)
むかし、岩津のさとに真福(まさち)というわかものが住んでいました。
ある日、真福が近くの野原へ草つみに出かけると、子どもたちが手に手に小石やぼうを持って、小さな青へびをいじめていました。
青へびはぐったりとしてしまいました。
「これこれ、そんなかわいそうなことをするもんじゃない。にがしてやりなさい。」
真福が言っても、子どもたちはなかなか言うことをききません。

そこで、お金とひきかえに、その青へびをゆずってもらいました。
青へびをやさしく両手にだいた真福は、子どもたちの目のとどかない草むらへそっと放してやりました。
「もう二度とつかまるんじゃないぞ。早くおうちにお帰り。」
青へびは何度もふり返りふり返りながら、ゆっくりと草むらの中に消えていきました。
しばらくすると、今までのどかに晴れていた空が、にわかに暗くなりました。
風がふき出したかと思うと、はげしい雨がふり出しました。
かみなりも鳴り始めました。
またたく間に、あたり一面が水びたしです。
子どもたちも村人たちもびしょぬれになって家に走って帰りました。
ところが、家に帰った真福はふしぎなことに気づきました。
あんなにはげしい雨や風なのに自分の体は少しもぬれていませんでした。
「おかしいな。あんなにはげしく雨がふっていたのに。」
真福はまっ暗な空を見上げながら首をかしげました。
その夜、真福がぐっすりねていると、夜明け近くになって、ゆめの中に美しい女の人があらわれました。
「わたしは、きのう、野原であなたに命を助けていただいた青へびでございます。ほんとうにありがとうございました。実はわたしは海の龍王のむすめでございます。」
むすめの言うには、きのう、へびにすがたを変えて野原で遊んでいたところ、あまりあたたかな天気だったので、ついうとうととねむってしまい、気がついた時には、村の子どもたちにとらえられていたというのです。
真福はきのうのできごとを思い出していました。
「お礼に、今連れている一ぴきの犬をさし上げます。どうぞかわいがってやってください。この犬には、毎日、白いごはんをおかまいっぱいたいてやってください。」
むすめはそう言ったかと思うと、すっとすがたを消してしまいました。
真福が目をさますと、まくらもとに白い犬がすわって、じっと真福を見つめています。
「ああ、ゆめの中の話はほんとうだったんだな。」
真福はさっそく土間におりると、ゆめの中で聞いたとおりに、大きなおかまに、まっ白なごはんをいっぱいたいて犬にやりました。
犬はうれしそうにしっぽをふると、まだほかほかと湯気の出ているごはんをうまそうに食べ始めました。
「それにしても、よくもこんなに食べられるものだなあ。」
感心しながら見ていると、犬はまたたく間におかまいっぱいのごはんをたいらげてしまいました。
はらいっぱいになった犬は、ごろんと横になると、すぐにねむってしまいました。
それを見ると、真福はなんだか心配になってきました。
「こんな調子で毎日ごはんを食べられたら。これはこまったことになるぞ。」
ところが、しばらくすると、ぐっすりねむっていた犬が、むっくと起き上がりました。
ううんと大きなのびをすると、真福の顔を見て、ワン、ワンと大きな声でほえたてました。
犬がほえるたびに、口から、ザザー、ザザーと、なにか光ったものをはき出しています。
おどろいた真福が手にとってみると、ぴかぴかの小判でした。
「うわあ、本物の小判だあ。」
真福は、こしがぬけるほどでした。
次の日も、そのまた次の日も犬はまっ白なごはんをはらいっぱい食べました。
そのたびに、ぴかぴかの小判を、ザザー、ザザーと、口からはき出しました。
こうして真福は、たちまち村いちばんの大金持ちになりました。
村人は、真福のことを真福長者とよぶようになりました。